ウタカゼ キャノンボール(仮)を新刊で頒布しますよー! と先日お伝えしましたが、
本日は、SillyWorksが冬コミに持ち込む既刊本を紹介しちゃいます。
新刊ともども、よろしくお願いしますっ!

ウタカゼ怒りのケモノ道

ウタカゼ 怒りのケモノ道 表紙
SillyWorksが贈るウタカゼ本第三弾。
ウタカゼを遊んでいて一番の恐怖、それは騎乗動物からの転落…ということで、
「新たなる騎乗動物」「騎乗動物への直接攻撃」を盛り込んだシナリオを提案させて頂きました。

作っているタイミングで、キャラバンカーに乗る公式サプリメント「ウタカゼ キャラバン」の
発売が発表されたため内容が被っていないか心配したけど、目指している方向は違っていたので一安心。

シナリオのテーマ:『Mad Max』

B5判 / 20ページ / 2015夏発表 / シナリオ

スクレス!

SWP表紙
 統廃合の危機に瀕している学校を救うため、生徒たちが立ち上がる。私たちの大好きな学校を守るために、私たちができること……。それは、プロレスをやること! レスラーになって学校を世に広く宣伝し、入学者を増やそう! ここから「みんなで叶える物語」スクールレスリングプロジェクトが始まる!
 
 ― 『スクレス!』はサイコロフィクションのシステムを使った、オリジナルの学園プロレスエンターテイメントRPGです。今注目のスクールレスラーになって、自分たちで作り上げる大会のメインイベントを目指し、それぞれがトレーニング、特訓、宣伝活動、挑発、襲撃、返り討ち……その合間に青春を謳歌したり、乱入してきたレスラー仲間に台無しにされたりもします。時に励まし合い、時に争い合い、友情や遺恨を作り上げながら、みんなが目指すのは観客の興奮と熱狂に包まれたリング、その渦の中心にあなたは立てるのか!
 
B5判 / 72ページ / 2015夏発表 / ルールブック(サイコロフィクション)

歌風嫁日記

歌風嫁日記表紙
SillyWorksが贈るウタカゼ本第二弾。
ウタカゼ著者の一人、小林正親さんの結婚が発表されたので、
このタイミングを逃すと発表できないとの想いがかたちをなした小林夫妻結婚記念本。
ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに!
 
往年の名作PPG扶桑武狭傳をモチーフとした表紙が、小林正親ファンには好評です。
 
シナリオのテーマ:『結婚』
 
B5判 / 32ページ / 2014夏発表 / シナリオ&追加ルール

ガルゥによるガルゥのためのストーリーテリング7つのコツ

ガルゥによるガルゥのためのストーリーテリング7つのコツ表紙
世界初!……だったら嬉しい、ワーウルフ:ジ・アポカリプスのストーリーテリングについて、ガルゥ(ワーウルフ)が語り合うというコンセプトの1冊です。

・PCが初心者だったらどうしたらいい?
・PC達が飼われた羊のようにゾロゾロ動くのを打開するには?
・狂乱でシナリオが壊れたらどうする?
・キャンペーンがダレるのは何故?

そんな、ストーリーテラー諸氏が悩みそうな疑問に、W:tAをプレイしているガルゥ達が1つの解法を示してくれます。
ちょっと見てみたい方はこちらをどうぞ ->「ガルゥが語るST_TIPS目次
 
B5判 / 48ページ / 2014夏発表 / プレイガイド

風になれ!

風になれ!表紙
SillyWorksが贈るウタカゼ本第一弾。
『ウタカゼ発売直後に同人誌を出せば、一瞬だけ日本最大のウタカゼサークルになれそう』
ということでこのタイミングでの発表となりました。
会場では他に1サークルしかウタカゼ本を見かけなかったので、概ね目的達成。
 
往年の有名RPGにインスパイアされたウタカゼたちのスケール図付きの表紙が、一番の見所です、
 
リプレイのテーマ:『はじめてのウタカゼ』。
シナリオのテーマ:『歌』。
 
  
B5ヨコ判 / 30ページ / 2013冬発表 / リプレイ+シナリオ

最後にもう一度…

C89 12月30日(水) 西地区 き―13b
RPG Catsさんのブースで頒布します! お待ちしています!


SillyWorksのC89情報をまとめて見るにはこちらから!
SillyWorksのC89情報まとめ

SillyWorks、新刊やります!! やらなくないです!
 
 
 
 
ウタカゼ キャノンボール(仮)
 
  ―― ウタカゼは強くて、楽しくて、ちょっぴりさみしい!!
   簡単に言うならば、「疾走感あふれる青春アクションサプリメント」です!!! 
 
 
 

というわけで新刊は、こびとなコビット族を演じるTRPG、ウタカゼのサプリです! 
 
 
あ……、コミケ(C89)の話です。
 
場所は、西地区 き―13b、12月30日(水)
 
RPG Catsさんのブースで頒布します!
 
皆さんよろしく!
 
 


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SillyWorksのC89情報まとめ

「あ、姐さん! こっちこっち」

 

そう私を呼ぶのはミアだ。フューリーのガリアルドね。この前の狂乱の話が、なんとなく途中になったので、待ち合わせをしたのだ。ミアのいる、ソファの席に近づくと、彼女はわざわざ立ちあがってハグをして、しれっと私の右手を絡め取り、私を隣に座らせた。あの、手がつながったままなんですが、それは……

 

「狂乱の話の続き、教えて?」

深く考える間を与えずに、話をしよう! という体勢のようだ。……あの、ウェイトレスを呼び止めて注文するのすら、気恥ずかしいんだけれど……まあ、いいか。

「う、うん、わかった。まずは、PCが狂乱している最中の、STCやモブの扱いについて、指針を話すわね。この前はPCの心配だけだったから」

「うん」

「とりあえず、できるだけ死なせないようにすること」

「それ、PCの時も聞いたような……」

「ええ、まあね。でも、PCとは違う理由があるの。STCやモブの場合は、狂乱後の後味の問題ね。死人が出ていると、狂乱のシーンが終わった後の後味が悪い……はず。普通なら」

「あー、それはわかるよ。キンフォークの子が、ミステリー小説で、偶然の目撃者が、巻き添えで死んだ時みたいな感じって言ってた。……『私達』にとってはそんな程度じゃ済まないけど」

「そうね……とにかく、無駄に死なせるべきではないってこと」

「死なないようにするのかぁ……一般人なら、デリリウムでじっとしててもらって、キンフォークなら、対策を心得てるだろうから隠れて、ガルゥなら……別に一方的に死なないからいっかぁ、って感じでいい?」

「そうね。……理由もなく、わざわざ攻撃するプレイヤーがいなければね」

「あ……どうするの、そんな困ったヤツは」

「後味をわるーくしてやる。あと、名声にペナルティもいいね。高潔プールをごっそり取っちゃえ。上げにくいから」

「後味を悪く、ってどうやるの?」

「……問題です。人質に取られた時、撃たれないためにするべきことは?」

「えぇ!? いきなり?」

「誘拐はいきなりなものなのです」

「でも、それは知ってる、名前を言うんだ。学校で習ったよ」

「正解。理由は?」

「え……知らない……」

「そう? じゃあ、第2問。しばしば人殺しが、殺す前後に、被害者の顔を隠すのは何故?」

「あー……人だと思うとキツイから?」

「Blava! 人質の話も同じ理由よ」

「そっか。人質Aから、ミアになれば、物から人になって、撃ちにくくなるんだ」

「そうそう」

「……つまり、無駄に殺されたキャラに、名前をつければいいってこと?」

「そうそうそう。泣きながら故人を呼ぶ人……まで出しちゃうと、他のプレイヤーまで陰鬱としてくるから、警察無線から名前が聞こえてくる、とか、新聞に名前が載る、位がいいと思うわ」

「はぁ、ナルホドぉ」

「逆に、避けようがなかった惨事の時は、名前をつけちゃ駄目よ」

「無駄にプレイヤーを凹ませるからだね。わかった」

 

ウェイトレスが、カフェサンブーカを運んできた。チップを出すために、ミアの手を離すと、むー、とか言っている。いや、どうしろと……。そんな私達を見て、ウェイトレスはくすっと笑って去って行った。

……さて、これは脱線だけれど、使えるからいいだろう。ついでに話してしまおうか。

「STCに名前をつけるかどうかは、物語の演出上も意味があるわ。物語のスパイスとして、人が死んだという衝撃を与えたい時には、名前のないキャラクターの死の情景を、丁寧に描写する。

影界から、その部屋を覗くと……モノクロのはずの視界が、赤く染まっているような錯覚を覚えた。理由は簡単。ルーパスでなくて良かった、と思わされる程の、鼻につく血の臭い。ソファには、長い髪を結い上げた女が座っている。座っている、とは言っても、その女が2度と立ち上がらないことは、赤く染まったソファと、女の生白い肌を見れば、明らかだった。

陰鬱さを出したい時には、名前のあるキャラクターの死を告げる。情景の描写は抑え目か、ほどほどにね」

影界から、その部屋を覗くと……ソファに据わっている女と目が合って、どきりとした。かつて白かったソファは、何かの色に染まっている。恐らくは赤だろうと、君の鼻が告げている。かつて、セレステと呼ばれた女は、まばたきもせず、いつまでも君をみつめていた。

「死なないで! 姐さん!」

と、芝居がかって言いながら、しれっと抱きついてくるミア。可愛いなぁ。別に期待していたわけじゃない。予期はしていたけれど。

「死ぬ気はないけれど。ね、けっこう違うでしょ」

「うん、違う」

「……でも、なんかだいぶ脱線したわね。話を戻そうか」

 

私はそう言って、狂乱の話に戻ることにした。……そういえばこの子は、いつの間にまた、私の手を取ったのだろう。ま、いいか。

「それじゃ、狂乱後の後始末の話をするわね。まず、狂乱の騒ぎが収拾したら、休憩して仕切りなおした方がいいわ」

「あー、方針決めてやらないとぐだぐだになるもんね」

「それに、プレイヤーの側も休ませてあげた方がいいし、ね。狂乱中は、PC間の関係とか、どうやったら生き残れるかとか、考えることがたくさんあって、負担が大きいから。さて、それじゃ、狂乱後にありそうな状況を考えようか」

PCがパワーダウン

  • PCが怪我をした。
  • PCがハラノになった、狼を失った。

シナリオの危機

  • 隠密作戦が露見した。
  • 重要STCが死んだ。
  • 重要な物品が壊れた。

第三者の介入

  • 目撃者等がいてベールが脅かされている。
  • 警察などが動き出して迂闊に動けなくなった。

と、この辺りかな」

「あー、どれもありそう……」

「まず、PCがパワーダウンした場合ね」

「怪我くらいなら、簡単そうだね」

「そうね。再生不能以外なら、変身して数分放置すれば治る。再生不能の場合は、変身したまま安静にすれば、1日1段階治癒する(訳注:日本語版P210)。〔聖母の手〕をかけて貰う。PCが出来なければ、STCへのチミナージが要るわね」

「そーいえば、姐さん、こんなの知ってる?」

ミアはそう言うと、胸ポケットから何かを取り出した。霊的な何かを感じる。霊符だろうか?

「初めて見たわ。霊符?」

「そう! 新しく開発されたやつだってさ。爪でも牙でも、銀でも治るよ」

20th anniversary edition(未訳)より引用

Gaia’s Breath ガイアの息吹 (霊力5)

Gaia’s Breathは小さな瓢箪形の霊符である。この小さな瓢箪を砕いて、開いたままの傷に振り掛けると、4段階までの負傷段階が回復する。再生不能ダメージも治癒することが可能である。ガイアの息吹を作るには、象形文字で装飾した瓢箪に、治癒の精霊を封印する。
(訳注:この霊符はとても強力なので、供給量を絞ることを強く推奨する)

「2つあるから、1つ姐さんにあげる」

「えぇ!? でも、珍しい物でしょう?」

「いいの」

彼女は、それ以上何も言わなかったけれど、彼女の目を見たら、貰わないといけない気になってくるから不思議だ。

「……わかったわ、ありがとう」

「うん!」

彼女は嬉しそうに笑った。可愛い。

 

「それじゃ、次は……ハラノとか、狼を失った時は?」

「その場合は、プレイヤーがPCを動かすことに消極的になるから、少し大変かな。立ち直るための描写をしないといけないから、どういうのが好きか、プレイヤーと相談が必要かも」

「どんな相談?」

「PCが、それを克服するためのギミックとして、プレイヤーは何が必要だと考えているか、がわかればいい。他のPCに体験を語って聞かせる場なのか、自棄になって酔い潰れて恋人のキンフォークに平手打ちされるのか、祖霊に喝入れられるのか、誰かが窮地に陥ったのを助けるのか、ひたすら修行に打ち込むのか。そういう、そのPCが立ち直るシーンに必要なギミックを、STが用意するのね」

「ナルホド、『私達』だって、うだうだしてるもんね、狂乱明け」

「そうね……でも、フィクションなら、そこを描くのも面白いじゃない? せっかく狂乱したんだし」

「そうかも。でもさ、プレイヤーにプランがなかったら?」

「じゃ、使えそうな汎用例を……。シナリオの流れが緩やかなあたりなら、PC達にじゃれて貰って、頃合いを見て回復させる感じ。PC達が効果的な行動を思いつかなかったら、凹んでいるPCに、危機感を煽るような夢を見せる。そのPC抜きで、敵に挑んだパック仲間が殺されるシーンとか、そういう露骨なのでいいと思う」

「それ以外の、流れが急な所だったら?」

「クリアにゲーム内時間でタイムリミットを切って、押すのがいいかな。もしくは、狂乱したPCがうだうだしているシーンと、他のPC達が物語を進めるシーンを交互にやって、他のPC達がピンチになって……」

「ここにジョンがいてくれたら……!」

「そう、それね。そのジョン君が夢を見て飛び起きて駆けつける、みたいな感じ」

「漫画っぽいかっこよさだね」

「あ、押したキャラは絶対殺さないように気をつけてね」

「押されて死ぬんじゃ、プレイヤーが腐っちゃうもんね」

 

「次は、シナリオの危機ね」

「困るよねぇ」

「いや、別に……」

「ええええ!? なんで?」

「大抵は、都合のいい偶然が落ちていれば、帳消しにできるじゃない」

「都合のいい偶然?」

「まず、隠密作戦が露見した場合を考えようか。大暴れしちゃって、バレたら、悪いヤツはどうする?」

「アジトを引き払って逃げる?」

「うん。公平に見れば、逃げられたから任務失敗で、名声減らされて終わり、になるんだけれども、誰も、そんな不都合な現実を見るためにゲームをしてるわけじゃないわよね」

「まあ、そりゃ……そーかも?」

「都合のいい結末のためには、何が足りない?」

「悪いヤツの行き先?」

「正解」

「それを都合良く、誰かが知ってればいいってこと?」

「そう。警官の協力者から、逃げた先の防犯カメラの映像が貰える、とか。悪いヤツが検問に引っかかって、警官を殺して徒歩で逃げたから、その近くにいるはずだ、とか。地元のシャドウロードのマフィアの人が行き先を知ってて、情報が買えたりする、とか」

「なんて都合の良さ……」

「逃げずに、アジトの防備を増強した場合でも、味方の増援が来ればいい。グラスウォーカーが抱える、キンフォークの私兵部隊、とか。ま、苦労するのは『現実』だけでいいってことね」

「それは賛成ー」

「重要STCが死んだ時も同じね。重要STCが語るはずだった情報が……」

「USBメモリが出てきたり、知り合いが断片的に聞いてたりするんだ!」

「そうね。それでも困ったら、コネや協力者から代わりの情報が得られたりすればいいわね」

「これは、なんか想像ついたよ」

「よかった。次……物が壊れた時は、割と困るけれど……調達するか、作るか……悪党との取引に使う物なら、似た物を持って来て騙すか、そんな所ね」

「騙すって?」

「うーん……スパイ映画とかにある、偽物を渡して、確認しようと意識が向いた瞬間に殴りかかる、みたいなシーン」

「それって、プレイヤー達は思いつくのかな?」

「導師とかが提案しちゃえばいいのよ」

「あ、そうか」

 

「さて、次は、第三者の介入について、ね」

「なんか面倒くさそうなんだけど……」

「テキトーでいいのよ、スパイスだから」

「どういうこと?」

「本編には関係なくって、言ってみれば、狂乱っていうものを演出するための一助なわけでしょう?」

「うん」

「狂乱したせいで面倒だなぁ、ってPCが思うような仕掛けをして、後は忘れればいい」

「具体的には……」

「例えば、警察が地上をうろうろしていて、対象の建物に近づけない。ガントレット強度が高すぎて、影界から入るのも難しい、と思って考え込んでいたら、ボーンノーアのクリアスとかが話し掛けてくるわけ。やってみせようか」

「うんうん」

彼女は、目を輝かせて頷くと、姿勢を正して座りなおした。あれ? そういえば、いつ手を離したんだっけ……。ま、いっか。

裏路地で、殆ど酔い潰れた女の子を、無理矢理車に押し込もうとしている男達を見た瞬間、ミアは怒り狂い、飛び出していた。仲間達のおかげで、死人こそ出ずに騒動は収まったものの、そこかしこに、警察がうろうろしている。当初の目的だったビルに、我々のように目立つ者が近づくのは骨だろう。街の真ん中にある、ワームの下僕達の本拠のすぐ近くで、界渡りをする度胸は、君のパックの、人腹のシーアージには無いようだ。途方に暮れていると、20代半ばの、小汚い男が近づいてくる。どこかで見た事があるような気がする。

「お、騒いでた人達はっけーん。やあ! ミア? って言ったっけ? もう癇癪は収まったのかい?」

「む……うっさいな! あれを見て、助けないわけにいかないじゃんか!」

「おぉう、おっかないおっかない。別に、責めちゃいないよ。ただの挨拶じゃんかぁ」

「茶化してないで、用がないなら、あっちに行ってよ。忙しいんだからさ!」

「知ってる。俺達はいつだって忙しいよな。しかも、姉ちゃん達みたいな、寄せ集めっぽい人達は、大抵、ガイア様のために、何かと、急いでるよな」

「……何が言いたいの?」

「急いで、何処に行きたいのさ? ガイア様のために協力しあおう」

「なんとかーってビルだけど」

「……へぇ。それなら、表通りを通らなくたって行けるよ、ついてるね」

そこまで言うと、彼は、手のひらを上に向けて差し出した。

「何?」

「協力しあおう、って言ったろ? 俺は姉ちゃん達を助けるから、姉ちゃんは、アレックスが大好きな、俺の兄弟を助けてくれりゃいいよ」

「むー! と言って、10ドル札を渡す」

「ケチケチ値切らない辺り、フューリーの姉ちゃんはかっこいいよな! じゃあついて来なよ」

彼は、おもむろにマンホールを開けて、下に降り始める。

「う……やっぱり、と思いながらついて行く」

「心配しなくても、下水には浸からないと……思ったけど、ハハハ、晴れてたらよかったのにね。ま、転んでも溺れたりはしないよ、浅いから」

というわけで、<敏捷>+<運動>で判定してね。失敗したら、ダイブ。

「うわあ……もー! 狂乱なんてするんじゃなかった……」

「……っていう事」

「困ってないけど、ろくでもない目に遭ったよ……でも、死にそうな目に遭うとかじゃないんだね。落とし所ってやつ?」

「そうそう。致命的だと、物語が綺麗に終わらないから、フラストレーションが溜まるし」

「実害があんまりない程度がいいのかぁ」

「そうね。あんまり実害が酷いと、プレイヤーは狂乱に消極的になるから」

「もう1個の、目撃者等がいてベールが脅かされている、っていうのは?」

「動画とか写真撮られてアップされたとか……デリリウムにならなかった人につけまわされるとか……」

「うわあ、めんどくさい……」

「ちゃんと対処すると時間がかかるから、後回し……というか、同じメンバーでセッションするなら、次回以降のシナリオのネタにすればいいと思う」

「例えば?」

「パターンスパイダー捕まえてきて、改造して、ネットに流して、その動画が、検索でヒットしないようにする、とか。デリリウムにならなかった人は……その後も何かとPC達をつけまわすキャラになって、嫌な賑やかしとして、定期的に出て来る、とか」

「考えただけで頭痛いよ、それ」

「ま、だいたいこんな所かな? 本当にひっどい目には、できるだけ遭わせないのがコツね。……そういうのが好きだっていう人も、中にはいるから、趣向は訊いといてもいいかもしれないわ」

「フランクさんとか、そういうの好きそう」

「いい勘してるわね」

 

「方針としては、なんか優しく対処すればいいってことなのかな?」

「そうね、狂乱って濃密な体験だから、後始末まであんまり濃密にすると、胸焼けするし……ただ、PCが立ち直る過程については、プレイヤーと相談しよう。濃いのが好きな人はきっといるから」

「うん、わかった。ありがとう、姐さん」

彼女の笑顔は本当に可愛い。つられて、自然と笑顔になってしまう。

 

無事、狂乱の話も終わったので、またしても、カフェサンブーカとカフェラテを頼んでみる。

程なく、マスターが、エスプレッソマシーンを操作し始める。

「あのマシーン、姐さんが買ったって本当?」と、ミアが私に訊いた。

「それは、99%は嘘。あんな何千ドルもするの、買えないわよ……」

「何千ドル!? うわぁ……って、1%は本当なの?」

「私が買って来たのはマキネッタね。それで、マスターにコーヒーを作って貰ってたの、ドリップって慣れなくてね。そうしたら、ある日、突然、あのマシーンがやってきた、というわけ。お前がいれば、元が取れそうだからな、ハッハッハ! だってさ」

「流石、この店自体が道楽って噂のマスター……ところで、マキネッタって何?」

「んー、火にかけてコーヒーを作る道具ね。見たことないかな? 三段になってて、こうこうこういう……」

「見た事は、あるかも?」

「ふむ、じゃ、今度うちでやって見せてあげるわ」

「……」

私の言葉を聞いたミアは、3回、何かを言いかけて、やめた。ん? 私、なんか変なこと言った? 自問自答しながら、頼んだ物をウェイトレスから受け取り、口をつける。ミアは固まったままだ。

「ミア? どうしたの?」

「……それは、あたしのために、姐さんが、コーヒーを、入れてくれる、ってこと?」

「ん? そうだけど?」

と、答えたものの、何故そんなに力を込めて訊くのだろう。私がきょとんとしていると、彼女は僅かに微笑んで、「楽しみにしてる」と呟き、カフェオレに口をつけた。

楽しみというミアの言葉の、寂しそうな響きが、いつまでも耳に残っていた。

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