ワールド・オブ・ダークネスって?

注)この記事は、柚木の独断と偏見に基づいて書かれています。したがって、記述の一部または全部が事実と食い違うかもしれませんが、当たり前です。ご了承ください。

八五郎 : 
ご隠居ォ、飲んでますかァ〜?
ご隠居 : 
また酒を飲んで来やがったな…医者に言われて断ったと聞いたぞ?
八五郎 : 
いえ。医者に断酒しろと言われたのを断ったんです。
ご隠居 : 
なんだい。断酒を断ったのか…アル中になるぞ、そのうち。
八五郎 : 
そういやァ、『ワールド・オブ・ダークネス』ってぇゲームなんですがネ。
ご隠居 : 
あぁ、コアルールか。買うのかい?
八五郎 : 
いえ。盗もうかと。
ご隠居 : 
お前は、酔うとロクなことを言わないな。
八五郎 : 
だって、ご隠居さん。世の中には詐欺みてぇなゲームがゴロゴロしてますぜ。
ご隠居 : 
まぁ、否定はしないが…。
八五郎 : 
買って損するのは、いつも焼死者だ。
ご隠居 : 
それを言うなら消費者だろう。
八五郎 : 
アルなんとかってぇのは、名前変えて同じもの出してやがる。バカにしてまさぁ。
ご隠居 : 
だが、大分売れているそうだ。好きで止められない人が、それだけいるんだろう。
八五郎 : 
あぁ、それが本当のアル中だ。

コアルールって何?

 ハイランダーの“天罰”で敵のズボンを下ろして世界に放映したら社会戦ダメージだと大真面目に主張している皆様、こんにちは。試される大地の屯田兵、柚木です。いえ、酔っ払っていません。私は素面です。
 本屋を歩けば、丁寧にビニール包装されたライトノベルと超人をプレイするシステムばかりが並んでいるご時世。日替わりのように、次々と新刊が棚に並びます。またそれをこまめに買う人もいるわけでして、レジに並びながら、よく飽きないなぁ…と不思議に思ってしまうことがよくあります。
 そういえば、行きつけの食堂は、日替わり定食と称して毎日同じメニューを出していますが、いまだに注文する人がたくさんいます。ということは、たぶん、本の方も表紙だけ日替わりで、同じものを違う名前で出しているんでしょう。もしくは、ビニール本というエロティックな雰囲気に手が伸びるのかもしれませんね。そういえば、表紙のヒロインは露出が多い。私の実家の近くの本屋では、ライトノベルの横に、『同級生2』の小説版がおいてありましたっけ。RPGがアダルトゲームと並んで売られる未来も、そう遠くはないかと思われます。あ、『ナイトウィザード』はアダルトゲームになりましたから、別の形で達成されていましたか。大変失礼いたしました。
 さて、そういう中でも売れない本は次々と棚から消えてゆきます。インターネットで細々と生きながらえ、最後には絶版処分と相成るわけです。ところが、そんな時代に逆行して、いつまでも棚に並び続けるシステムがあります。それが『ワールド・オブ・ダークネス』です。私の大好きな『ワーウルフ:ジ・アポカリプス』も、4年に渡って札幌某店の本棚に並び続けていました。あぁ、売れ残りが返品されないで残っているだけ、という可能性は脇に伏せておいてください。話がややこしくなりますから。

八五郎 : 
結局、そのコアルールってのはなんなんです?
ご隠居 : 
『ワールド・オブ・ダークネス』ってゲームのことだ。このルールの上に、サプリメントみたいな形で、ワーウルフとかバンパイアとかメイジが遊べるようになっているから、コアルールと呼ばれているんだな。
八五郎 : 
横文字並べて、ペテンにかけようとしてやがるな。
ご隠居 : 
誰が騙すか、バカ。デザイナーなんぞと一緒にするな。
八五郎 : 
でも、前にご隠居さんのところで、別の『ワーウルフ』見ましたぜ?
ご隠居 : 
それとは世界成立の設定自体がまったく違う。別物だ。
八五郎 : 
別物ねェ…。
ご隠居 : 
これを買っても、騙された気にはならないよ。私が保証する。
八五郎 : 
まぁ、じゃあ仕方なくご隠居の顔を立てて買ったとしましょうか。
ご隠居 : 
嫌な言い方するなよ…まぁ、いいや。買ったとして?
八五郎 : 
あっしは何をプレイすることになるんです?
ご隠居 : 
他のゲームだと、大抵、世界観用語が出てきて、それの解説をすることになるな。
八五郎 : 
あぁ、そういやニルヴァーナとかいうゲームは難しかったですね。
ご隠居 : 
ニルヴァーナが? 何も難しいことはねぇじゃねえか。誰にGM頼んだんだ。
八五郎 : 
朴念寺の和尚です。「なに、ニルヴァーナとな。それはそもそも印度の言葉にして…」とか言ってよくワカラネエ。仕方ねえから、あっしらはセッション中、木魚ォ叩いて「ギャーテーギャーテーハーラーギャーテー」って唱えてた。
ご隠居 : 
バカ、般若心経を唱えてどうするんだ。葬式じゃねぇか、それじゃあ。
八五郎 : 
へへ。患って寝てたババアに、まだ死んじゃいねェ、って怒鳴られた。
ご隠居 : 
当たり前だ。まぁ、コアルールはその点で簡単だ。ひと言で済む。
八五郎 : 
白装束を着てスカラー波を防ぐ?
ご隠居 : 
お前はもう黙ってろ! いいか。お前がやるのは、同じ「現代を生きてる人間」だ。
八五郎 : 
「現代を生きている人間」て一口に言っても、たくさんいますよ?
ご隠居 : 
さぁ、そこがこのゲームの面白いところだ。キャラクターはどんな奴でもいい。
八五郎 : 
国会議員でも、サラリーマンでも、学生でも?
ご隠居 : 
そうだ。
八五郎 : 
不倫中の主婦でも、薬物中毒のミュージシャンでも、死刑囚でも?
ご隠居 : 
やりたけりゃ、支持率最低の大統領でも、流行に乗ってニートでもいい。想像力が許す限り、それが生物学的な意味での人間である限り、それこそ何でもいいんだよ。

全ては想像力の産物です

 背中でご先祖様が支えてくれていることを感じているスピリチュアルな皆様、こんにちは。北の大地に住む可憐な妖精、柚木です。なお、我が家は代々妖精さんの家系なので、宗教団体の勧誘はお断りしております。ご協力よろしくお願いいたします。
 前回述べたように、『ワールド・オブ・ダークネス』では、どんなキャラクターでも作っていいわけです。水戸黄門だろうが、ロッキーだろうが、MMR編集部だろうが、福永法源だろうが、プレイヤーの欲求次第です。時間と空間を気にしてはいけません。ハイデッガーはゴミ箱行きです。よかったですね。
 たとえあなたが、今世はあきらめて来世で頑張ろうとか問題を先送りするような無気力でモテない甲斐性なしのニートでも、人格者でモテモテの博士号を持った政治家を作って遊べます。むしろ、そういうキャラクターがお勧めです。日ごろの鬱憤をここで晴らすチャンス到来! どうせここ以外では、晴らす気力も能力もないんでしょうから、恥や外聞は捨て去るのが吉です。あぁ、キャラクター作りました? じゃあ、向こうの卓に行ってください。私よりもいいSTがいますから。
 さて、そんな彼のハッピーなマテリアルに埋め尽くされた生活を邪魔する悪いやつらがいます。幽霊とか、ワーウルフとか、ヴァンパイアです。彼らの多くは、日常生活を破壊する悪の権化です。でも、人間の大半はその存在を知りません。
 近所に夕ご飯の買い物に出た妻が、バッタリ会ったお隣さん同士で、
「ウチの亭主、満月が近いから、最近は遠吠えがうるさくて眠れませんの。オホホ」
 なんて、不眠を訴えたり、
「子供がバンパイアでしょ? 灰になるからイヤだって、学校に行かなくて困ってまして」
 とか不登校児を抱えてみたり、
「お宅の死んだおじいちゃん、幽霊でしょ。毎日午前三時に戸を叩いてうるさいのよ」
 なんて近所迷惑を訴えたりする、ということはまず考えにくいわけです。でも、こういうのが本当のファンタジーなんですよ?

ご隠居 : 
そうやって作ったキャラクターで何をするのか、だ。
八五郎 : 
知ってます。毎日巻き起こる世界滅亡の危機から地球や人類を救うんでしょ。
ご隠居 : 
違うよ。第一、そんなのは、きくたけワールドだけで十分だ。もういらねェ。
八五郎 : 
あぁ。どこからともなく湧いて出てくるモンスターを倒すんですね。
ご隠居 : 
D&Dでもない。
八五郎 : 
アポカリプスの到来を防ごうとしたり。
ご隠居 : 
それは、旧作の『ワーウルフ』だな。
八五郎 : 
じゃあ、何なんですか?
ご隠居 : 
ただ平々凡々な日常を送るだけだ。
八五郎 : 
そんなのが本当に面白いんですかい?
ご隠居 : 
いいや。つまらねェ。
八五郎 : 
そら、流行らねェはずだよ。
ご隠居 : 
だから、化け物、つまり幽霊がいる。
八五郎 : 
日常の退屈しのぎに幽霊が!? 「暇なの? 私たちも暇なの。みんなで集まっているから向こうの家にいらっしゃいな」なんて、誘われて行ったりなんかするんですかね。
ご隠居 : 
誘われて行ってどうするんだ。
八五郎 : 
本物のお化け屋敷を楽しむんでしょ?
ご隠居 : 
バカ。何で毎度毎度セッションでお化け屋敷をしなきゃならないんだ。
八五郎 : 
だって、最近「本物」志向が流行ってるでしょ? こだわりの名店、みたいな。だから、本物の幽霊を集めたお化け屋敷。流行りますよォ。レトロさが、若い子にも受けますョ。
ご隠居 : 
もうその話はいいよ。
八五郎 : 
他には、化け物はいないんですか?
ご隠居 : 
ワーウルフだとか、バンパイアなんかがいたりするよ。でも、いることは、みんな知らないんだ。幽霊も同じことだ。
八五郎 : 
いるには居るけど、知らないんですね。
ご隠居 : 
そうだ。だが、実際にそういう連中は存在する。
八五郎 : 
いるのに、知らないってのは変ですね。知らないから、居ないってぇなら分かる。
ご隠居 : 
まぁ、一部には知っている奴も居る。だが、それもキャラクターの設定次第だな。
八五郎 : 
幽霊とかワーウルフになった経験があるとか、前世でヴァンパイアだったとか。
ご隠居 : 
…まぁ、できねぇ、とは書いてないから出来るんだろうな。
八五郎 : 
来世でそうなる予定だってのは?
ご隠居 : 
好きにしなヨ。まぁ、最終的には、プレイヤーが知っていたいと思うかどうかだ。
八五郎 : 
ははァ…自由だね。アメリカ的だね。
ご隠居 : 
坊さんは幽霊を、神父や牧師はヴァンパイアを知っているだろう。
八五郎 : 
巫女さんは? MMR編集部は? SMクラブの女王様は?
ご隠居 : 
何でもいいよ。ともかく、知っていたければ知っていることが出来るってことだ。
八五郎 : 
じゃあ、STにいつでも何でも、聞いたら答えてくれるんですかね?
ご隠居 : 
「知っている」ことと、「実際にどうであるか」は別物だ。
八五郎 : 
どういうことです?
ご隠居 : 
幽霊が「存在する」のをしっていても、「普段何をしているか」は知るめえ。
八五郎 : 
あぁ、どこに住んでて、何が好物で、何時に寝て、何時に起きて、恋人は誰で…。
ご隠居 : 
私ァ、お前さんに説明するのが馬鹿馬鹿しくなってきたよ…。

コアルールはホラーです

 アメリカのホテルでオレンジを食べて罰金刑を課せられた海外旅行経験者の皆さん、こんにちは。極東の北方に住んでいる歩くグローバル・スタンダード、柚木です。そろそろISOに、世界人間標準として登録される予定です。骨折したまま登録されると、そうではない人は人間規格を満たさなくなりますので、私の健康状態にはくれぐれもご注意ください。
 実は『コアルール』ってホラーだったりします。でも、怪物が出てくればホラーというわけではありません。宿題をやったつもりで、授業直前にやってなかったことに気がついたときは、ホラーです。覚えのないアダルトサイトの請求が来た時もホラーです。好きな人をずっと見つめ続けるのも、見られている方からすればホラーです。彼女が部屋に遊びに来たときに、ベッドの下にエロ本があるのはホラーです。初体験で勃たな…いえ、なんでもありません。
 ところで、幽霊が出てきたらホラーになりそうですよね? でも、幽霊にも色々います。世の中には死んだ人に会いたいなんて人もいるわけで、恋人の霊に会って天にも昇る心地で本当に天に昇って、そのまま帰ってこなかった人が今までに4D10人います。死んでしまうのが怖い人にとってはホラーです。トイレの花子さんは、どの学校でも七不思議の中に登場していますので、合計すると日本全体で約1万人以上いると思われます。1万人の花子さんが政治活動を始めたら立派な票田になりますので、政治家にとってはホラーです。担任の先生にしてみれば、トイレから出てきませんので授業ボイコットで学級崩壊…やっぱりホラーです。
 つまり、シナリオに困ったSTは、とりあえず幽霊を出せばいいわけですね。そうしたら、ワールド・オブ・ダークネスっぽくなります。つまり、死者をたくさん出せばいい…あぁ、一番いいシナリオは「地獄見物の旅」なのか。

八五郎 : 
ホラーだってぇのは、得体の知れねぇ奴がいるからですか?
ご隠居 : 
いや。一番ホラーなのは、連中じゃなくて、人間だ。
八五郎 : 
何でです?
ご隠居 : 
人間、何をしだすか分からないだろう? その人間の行動様式は社会が作る。
八五郎 : 
段々と話が大きくなってきましたね。
ご隠居 : 
考えてみねぇ。ワーウルフよりも、ナイフを持った18歳の方がよっぽど怖い。
八五郎 : 
あっしは、まんじゅうが一番怖い。
ご隠居 : 
黙って聞きなよ。そんなキレる18歳を育てた親、学校、地域、法律、社会は、もっと怖い…というわけだ。
八五郎 : 
そんなもんですかねえ。
ご隠居 : 
それを表すのが、「道徳」という能力値だ。
八五郎 : 
ドウトク? 道具屋の徳助ですか?
ご隠居 : 
人の名前じゃねえ。道徳ってのは、人として守るべき道のことだ。
八五郎 : 
ははぁ、なるほどねぇ。よくわからねぇけど、分かった気になった。
ご隠居 : 
つまり、悪いことをすると道徳が下がり、トラウマを負って、心を病む。
八五郎 : 
じゃあ、頭がおかしいヤツは、そのドウトクってやつが低いんですね。
ご隠居 : 
そういうことだ。あと、もう一つ重要なことがあるな。
八五郎 : 
なんです?
ご隠居 : 
道徳が低いことと、周りにどう思われているのかは無関係だってことだ。人間関係は、所詮はごっこ遊びの延長でしかない。心の中までは覗けないからな。
八五郎 : 
なるほど。じゃあ、ツンデレはドウトクが高くて、ヤンデレは低いんですね。
ご隠居 : 
あとは、不思議ちゃんと魔女っ子も…って何を言わせるんだお前は。
八五郎 : 
ヨォッ! さすがご隠居、ギャルゲオタク。彼女いない暦、50年!
ご隠居 : 
うるせえ、大きなお世話だ! 「良いことをしなきゃいけないのに、悪いことをしてしまった」という自責の念や罪悪感が、人の心を病ませるということを言いたいんだ、私は!!
八五郎 : 
じゃあ、「良いことをしよう」と思わなけりゃいいんですね。
ご隠居 : 
殴るぞ、この野郎。「良いこと」が道徳だろう。そう思わないでどうするんだ。
八五郎 : 
それでトラウマになるんでしょ? バカバカしいや。思うだけ損ですよ。
ご隠居 : 
損していいんだよ! 道徳というのは、人間の本来あるべき姿なんだから。
八五郎 : 
なるほどね。「どう」頑張っても「とく」にはならねぇから、ドウトクかあ。
ご隠居 : 
字が違うよ、バカ。

結局、何がホラーなのか

 一年中部屋にこもってエロ画像収集だけをしている活力ある若者のみなさん、こんにちは。現実をあきらめよう、がスローガンの柚木です。近いうちに選挙に出るかもしれませんが、そのときには清き一票を。当選したあかつきには、2次元の女の子以外とは結婚できない法律を作りますので、お楽しみに。
 さて、前のセクションのおさらいです。『コアルール』では道徳がホラーを表しているんだよ、という話をしましたね。クトゥルフのSAN値みたいなものです。そして、ホラーとは何かというと、人間の心、それを作り出す家族・地域・法律・社会なわけです。つまり、ナイフを持ったキレる若者よりも、幼女を誘拐してゴニョゴニョした挙句に殺害した外国人よりも、40年前に機動隊に向かって火炎瓶を投げていたおじさんよりも、みのもんたの一言で晩ご飯のメニューを決めてしまう無党派層のおばさんよりも、そうした行動を取らせる原因である社会の方が怖いんですね。
 あれ? そうなると、道徳はどこへ?

八五郎 : 
道徳ってぇのは、イマイチ分からないんですが、たとえば何です?
ご隠居 : 
「盗んじゃいけない」とか、「独り占めはいけない」とかだな。
八五郎 : 
それが道徳ぅ!?
ご隠居 : 
何かおかしいか?
八五郎 : 
泥棒は失業者になって、営業マンなら、タダで商品を売らなきゃいけなくなる。
ご隠居 : 
時と場合ってもんがあるだろう。
八五郎 : 
じゃあ、何時なら「盗ん」だり「独り占め」したりしていいんですか?
ご隠居 : 
いちいちそんなことが分かるか、バカ。
八五郎 : 
それに第一、「盗んじゃいけない」って誰が決めたんです?
ご隠居 : 
それは知らないが…まぁ、お前だって物を盗まれたら嫌だろう?
八五郎 : 
いや。あっしは盗まれるようなものは何もないですから。今だって全裸でしょ?
ご隠居 : 
服くらい着なよ…いや、お前はそうかもしれんが、普通はそう感じるものだ。
八五郎 : 
誰がそう決めたんです?
ご隠居 : 
そらァ、お前……んんー…まぁ、私の親父かなにかだろう。
八五郎 : 
じゃあ、その前は道徳はなかったんですかい?
ご隠居 : 
あるよ。あったよ……どっかにサ…まぁ、押入れの奥にでもあったんだよ。
八五郎 : 
じゃあ、押入れが出来る前は?
ご隠居 : 
…なんだ…その…まァ…・
八五郎 : 
もっと言えば、人間が生まれる前からあったかどうかということですよ。
ご隠居 : 
ん…そりゃあ、なかっただろうな。
八五郎 : 
つまり、道徳ってのは何処かで誰かが作ったものでしょう?
ご隠居 : 
ははァ…そう考えると、そうだな
八五郎 : 
その道徳のせいで、罪の意識を感じて精神を病むってのが間違ってまさァ。本来の人間の在り方を損なっているんです。だから、自ずと無理が出る。
ご隠居 : 
成る程な。ってぇと、そういう道徳の上に乗っかっている文明ってのも、同じ事か。
八五郎 : 
そうです。社会…もっと言えば西欧的近代、キリスト教的文化圏の底流を流れる道徳こそ、世界の諸悪の根源なんです。文明とか社会自体に無理が出るのはアタリマエだ。
ご隠居 : 
でも、そういう世界観なんだから仕方がない。
八五郎 : 
だから、ホラーなんですよ。
ご隠居 : 
どういうことだい?
八五郎 : 
つまり、現代は常識も道徳もないから普通に見えるけど、道徳のルールを適用したら狂人ばかりじゃねえか、社会自体が病んでるじゃねぇか…ということですよ。
ご隠居 : 
なるほど。そんなに広大なテーマがあったのか。いや、私は気がつかなかったよ。
八五郎 : 
その中でも、特に都会なんざぁ、その見本市みたいなものでさァ。
ご隠居 : 
まったく、その通りだ。いや、私はお前を見直したよ。
八五郎 : 
歌にもありますでしょ。「頭狂砂漠」って
ご隠居 : 
お前は、一度死んで来い! まったく…感心したそばから、すぐこれだ。
八五郎 : 
呆れないでくださいよ、ご隠居。まだまだ続きがあるんですから。
ご隠居 : 
それ以上、何も言うな。全部が嘘に聞こえるから、その辺でよしとけ。
八五郎 : 
いや、それでいいんですよ。どんどん風呂敷広げて、宇宙批判までやるますよ。
ご隠居 : 
何を言ってやがる。それじゃあ、コアルールの趣旨からはずれるじゃねえか。
八五郎 : 
外れてませんよォ。だって、このゲームは、法螺ァやるものなんだから。
ご隠居 : 
くだらねえオチまで付けやがった。

著:柚木正純  2006年7月30日

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